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畳のお手入れとまめ知識

川柳に出てくる昔の畳屋

 一昔前、「出職」と言って職人が家へ出向いて仕事をするのが当たり前でした。経師屋は襖や障子の貼りなおしに、畳屋は「表替え」や「裏返し」に来てくれました。畳屋は道端で仕事をすることが多いので特に目立つのでしょうか。そのユーモラスな仕事の様子が川柳に残っていますので紹介しましょう。

川柳に出てくる昔の畳屋

『畳刺し肘も道具の内へいれ』

 畳職人は庭にベッドのような木枠の台を出して畳を乗せると仕事を始めます。畳の縁を縫い付ける段階になると手の肘で畳を叩きながら縫い糸を強く締めつけます。そのすばやい動作に熟練の技があります。一人前の職人になると肘は固まって黒くなりいわゆる「畳屋の肘」になります。畳屋のことを昔は「畳刺し」と言ったのは畳を針で刺して縫うこのような動作から来ているのです。この川柳は体を道具の一部のように使って仕事をする畳屋の姿を見事に活写しています。また江戸の職人風俗が描かれた「江戸職人図聚」(注1)にもこの「畳刺し」がいます。右上で太い右肘をてこにして糸を引く職人がそれです。

『地団駄を踏んで畳屋糸をしめ』

 畳は芯になる「床(とこ)」と表面の「表(おもて)」に分かれます。それぞれ仕事の内容は異なっていて床を専門に作る職人を「床師」、表を付ける職人を「ツケ師」とも言いました。「床師」は何枚も稲藁を重ねて縫っていきます。ふわふわの藁を足で踏みつけながら縫うので“地団駄を踏んで”いるように見えるのでしょう。絵では中央の男がそれで、先端が曲がった鍵のような道具で糸を引張っている様子が描かれています。その右の男は針を刺している段階を示しています。左の男は杵のような道具で藁を叩いて平にしています。

注1:三谷一馬著 中公文庫